お土産を直し終わったお母さんが戻り、お父さんの隣へと腰を下ろしたとき、俺の緊張はピークに達していた。
初めてこんな大人数で昼食を食べるのだ。しかも他人に囲まれて。
父さんとの昼食でも会話の内容に気を付けていた時期はあったけど、もちろんそんなのは比ではない。
ただ向かい合って見知った顔と食事をするのと、初対面の人間の多い中で食事をするのとじゃ雲泥の差がある。
「和泉くん、緊張なんてしなくていいですからね。好きなものを食べてください」
亘さんはそう言ってくれるけど、素直にうんとも言えないだろう。
強張った表情の俺と……あと亘さんのお父さんも。相手の手の内を探るように、慎重な箸の動きが始まった。
「和泉くんは、その、いつから叶葉と?」
「はい。えっと……付き合い始めたのは十月の文化祭からです」
「そうか。叶葉は、少し真面目すぎるところがあるだろう? どうだろうか、困ったところなんかは」
「いえ、真面目なところは良いところだと思ってますし。友達思いで、努力家で、困ることなんてありません」
「ひゅーひゅー! お姉ちゃん愛されてるぅ!」
俺とお父さんの緊張感ある会話の中へ、たまに妹からの野次が飛んでくる。なんかところどころ反応が古いんだよな、この子。
でもそれでどうにか緊張がほぐされていく部分もあって、少しだけ感謝だ。



