亘さんのご両親は、亘さんの育ちの良さからも読み取れるよう、穏やかな空気が印象的だった。


誰かがふざけたり変わった行動を取れば、必ず誰かがそれをフォローする。


家族団欒という言葉がここまで似合うのも珍しいんじゃないだろうか。


……ここが、亘さんの生まれ育った場所なんだ。



「和泉くん、そこに、座ってくれ」


「は、はい」



お父さんから着席をすすめられ、指されたイスへと近付いた。



「あ、そうだ……これ、つまらないものですが」



手土産にと持ってきた菓子折りを渡す。紙袋の取っ手は、俺のせいでしわが寄ってしまっていた。



「あら、ありがとう~。あとでみんなでいただきますね」



俺はお父さんに渡そうとしたが、持っていったのはお母さんだ。空中に止まるお父さんの手に視線が集中する。



「……こほん、座ろうか」


「……はい」



……少し、夫婦関係が見えた気がした。


俺とお父さんはお互い向かいの席に座り、俺は両隣で亘姉妹に挟まれる形となった。


テーブルの上には昼食と呼ぶには豪勢すぎる品の数々が並んでいる。絶対、俺の家では今後出ることもないものばかりだ。



「お父さん、会いたいって言い出したのはお父さんさんの方なんだから、あんまり和泉くんを怖がらせないでね」



俺の左隣で亘さんが心配そうに語りかける。


助かるけど、やっぱりこういうのって亘さんへの心配ゆえなんだろうな。