そんな妹とのいざこざの後、ようやくついに亘さんのご両親がいるリビングへ足を踏み入れることができた。


緊張の第一歩。俺のことを否定せず、招き入れてくれたご両親に感謝しながら。


とはいいつつ、本当は品定めされるんじゃないだろうか。亘さんに見合う男になるために、ここは俺の武器である笑顔の使いどころをちゃんと考えないと。



「は、初めまして。叶葉さんとお付き合いさせていただいております、和泉理人と申します」



ここではまだ笑顔は早い。真剣な表情を見せて、亘さんとの関係は本気だって伝えないと。


深々とお辞儀をして、顔を上げる――と、目の前に人の顔があった。



「うわっ!」



それは亘さんのお父さんの顔だ。亘さんに似て、やけにパーツの整った顔がそこにある。


思いもよらない光景に、重心が後ろに寄って体がよろめいた。



「お父さん! 和泉くん、びっくりしちゃったでしょ!」



亘さんが間に入ってくれたおかげで距離ができて、俺の心臓は平常を取り戻す。


さすがに、こんな間近で顔を合わせるなんて思ってもなかった。



「……いらっしゃい、和泉くん。娘から話はよく聞いている」


「聞き出している、の間違いですけどね」



お父さんの言葉に、後ろからお母さんが註釈を入れる。


こちらは非常に穏やかそうな女性で、「ごめんなさいね、お父さんも緊張してるのよ」と言って笑ってくれた。