すると、亘さんはピタリと立ち止まる。
下を向いてプルプルと震えだしたので、どうしたのかと覗き込もうとした。だけどそれを亘さんの妹に阻止される。
それに気を取られている内に、亘さんは顔を上げていた。
「そ、その、あ……あんまり、身内の前でそういうことは……っ」
「理人さぁ~~ん! やるじゃ~~~ん!」
顔を真っ赤にして身をすくめる亘さんと、俺の脇腹を執拗に突いてくる妹。
刹那、俺は恥じらうべきことをしたのだと気付かされる。
た、確かに、二人きりのノリで言ってしまった……!
「い、いや、えっと……ご両親には、言わないでもらえると……」
慌てて妹さんの方を向き、笑顔を作る。しかしかなりひきつってしまった。
「え~? どーしよっかなぁ~」
不敵な笑みを返してくる妹さんに、強く出られない。仮にも恋人の妹なのだ。
「希望、お願い……っ!」
亘さんからも頭を下げている。
しまった。今日は俺の軽率な言動でこんなことになってしまうのか。
思ったより浮かれているみたいだ。もっと気を引き締めないと。
「しょーがないなぁ~! 今回だけだよ?」
そして無事一回きりのチャンスをもらい、亘さんと二人でほっと胸を撫で下ろす。
「和泉くん、嬉しいですけど、その……」
「うん、二人きりになれるまで我慢する」
「あの、そういうこともやめておいた方が……」
気が付いて妹さんを見れば、ニヤニヤと遊び道具を見つけた目でまた脇腹を突かれたのだった。



