亘さんは世渡り上手



亘さんは俺の気持ちを察したのか、微笑みながら首を軽く振った。



「わたし、悠里ちゃんのことが好きなんです。感謝、してるんです。

さっき、それを伝えてから来ました。『バカなこと言ってないでさっさと行ってきて!』って、怒られちゃいましたけど」



その心配はなさそうだった。


照れるような、悔しいような、そんな表情で亘さんの背中を押す谷口の姿が頭に浮かぶ。


谷口は……たぶん、この先も亘さんのことを嫌いになりきれないんだろうなぁ。嫌なことは真っ正面からぶつかってくるだろうし。


今はまだぎこちなさはあるかもしれないけど……。きっと、大丈夫だ。俺が思うことではないんだろうけど。



「谷口に、何か買って帰るか」


「いいですね。あ、みたらし団子売ってるところがあるんですけど、どうですかね?」


「いいね。はー、お腹すいてきた」



眉をつり上げてなにかしら騒いでくる谷口を想像しながら、屋台の方へと歩いていく。


せっかくの文化祭デートなのに振った女子のことを考えるなんておかしいけど、俺達はこれでいいのかもしれない。


俺達のクラスから、悲鳴をあげて出てくる男女。


またもや、ドアの隙間からは谷口の高笑いが響き渡っていた。