ミス・ミスターコンの学年一を決める日は着々と進んでいき、気付けば俺と亘さんは決勝まで勝ち進んでいた。


文化祭の準備で教室がにぎわう中、俺は文化委員に肩を叩かれた。



「りひりひ、これ自己PR文を書く用紙ね」



変なあだ名を付けてくる文化委員に若干呆れつつも、横線が入った用紙を受け取り……ふと思い出して、首をひねる。



「あれ、でも自己PRは文化祭でやるんじゃないの? まだいらないんじゃない?」


「え? りひりひは自分が負けると思ってるの?」


「え、う、うん。普通にありえると思うけど……」



決勝の相手、ちょっとヤンチャ系だけど女子に人気ありそうな人だったし。


そもそも俺、自分の顔が悪いとは思ってないけど、めちゃくちゃいいとも思ってないというか。なんで決勝まで上がれたのか、いまいちピンと来ていない。


自信がないというのとはちょっと違う気がする。言うなら、自分の顔が好みではない……ということなんだろうか。嫌いでもないけど、好きでもない。普通だ。


文化委員はぐいと顔を近付けてきて、眉間にしわを寄せる。



「あのねぇ、ダメだよそれじゃあ! 困るんだよねぇ、やる気のない人間がうちなんかに来られちゃ。会社全体の士気が下がっちゃうでしょ!」



まるで会社の上司のような態度に、苦笑が漏れる。そうしたらおいっ、と肩を叩かれたけど。



「大丈夫、勝てるよ。りひりひなら」



そう言って笑ってくる文化委員に――



「ちょっと近くないですか?」



と、間に入り込んできた亘さん。