純粋な恋心を持ってるのは、俺も三好先輩も同じなんだよな。
ただ、それを見えるように出してるか、出してないかの違いだ。
亘さんは、俺が亘さんのことを好きじゃないと思ってるから信用してくれているだけで……本当は三好先輩と同じだと知ったらどうなるんだろう。
見せない方が多く近付けるなんて、嫌な話だ。
「つ、つい前に出ちゃったけどさ……私は叶葉の便利な盾じゃないんだからね。次からは自分で断るんだよ」
「はい……ありがとうございました」
谷口は亘さんを諭していた。
亘さんの青ざめた顔色はすっかり元の色に戻っている。
よかった。
……のか、いまいちしっくり来ていない。
「和泉くんも……ありがとうございました。お昼、食べましょう?」
「あ、あぁ……うん」
亘さんに言われて、席に着いた。
心にもやもやとわだかまりができて、すっきりしない。
俺はまだちゃんと伝えられてないんじゃないか。
いくら亘さんが察しのいい人だからといって、言葉にしなくちゃ伝わないことだってたくさんある。
三好先輩も『好き』という言葉こそ放ってはいないけど、亘さんに伝わってるからこそ逃げられてるわけで。追ってるから、逃げられてる。
俺は、誰かを逃げられても追いかけたことがあっただろうか――。



