俺は谷口の隣に立って、三好先輩を見上げる。


また何かやってきた、と言いたげに三好先輩は苦笑した。それがまた、俺の心を奮い立たせる。



「亘さんが嫌がってるのわからないんですか」



――だから早く出ていけ。



「えー? なんか僕、悪者みたい? やだなぁ、そーいうの」



困った顔で、はぁ、と深いため息を吐かれる。



「相手を悪者にして自分をさも正義のように見せるのは、卑怯だと思うよ」



それだけ言い残して、三好先輩は教室から出ていった。


助かった……。ほっと胸を撫で下ろす。


でも、一瞬の静寂ののち、ひそひそと耳打ちが聞こえ始めた。



「あそこまで拒否することなくない?」


「ね、もったいないよねー亘さんも」



びくりと体を反応させる亘さん。


あ、ダメだ。この流れは。


クラスが嫌な空気になってしまっている。



「まぁ、亘さんにも好みがあるわけだしね。変に騒いでごめん、みんなご飯食べて」



俺はすかさずフォローを入れた。人気者の和泉理人として笑顔を見せれば、みんなはすぐに過去のこととして処理してくれた。


確かに、嫌な言い方をしすぎたかもしれない。


三好先輩の最後の言葉は、思っていたよりも俺の心に突き刺さっているようだ。