俺が笑えば、亘さんも笑い返してくる。


幸せだ。


亘さんは笑えるようになったし、俺も亘さんに俺の全部を受け入れてもらえた。


今だけは、幸せだ。



「和泉くん、一緒に写真を撮ってもいいですか?」


「写真?」


「はい。笑えるようになったら、絶対やりたかったことなんです。友達と記念撮影」



亘さんはバッグからスマホを取り出すと、カメラを起動した。表情からはわくわくとした期待が見える。


これは……断れないな。そんな顔されちゃ。


インカメラが二人を映す。ひとつの画面に二人を映すには必然的に距離が近くなる。俺はこの胸の違和感を隠すためにカメラだけを見た。



「あれ……?」



亘さんが戸惑った声を出す。画面に映った亘さんは、さっきまでの笑顔が出せなくなっていた。



「な、なんでしょう。自分の顔を見ると、顔が強ばって……」


「緊張してるんじゃない?」


「そ……そうですよね」



ゆっくりと深呼吸をした後、もう一度亘さんは画面を見る。



「……笑えない……」



どうやら、まだ完全には解決していないみたいだった。



「どうして……?」



俺は今にも泣きそうな亘さんの肩に軽く触れる。



「……亘さん、俺を見て」



亘さんは言われた通り俺を見る。



「笑って」



力なく、だけどふにゃりと笑った。


もう笑えなくなったわけじゃないようだ。


じゃあ、何か条件があるのか?