そのとき、腹の辺りがなぜか熱くなった。どくどくと心音が頭に響く。
嫌な予感がして、手を当てると……ナイフが、俺の腹を切り裂いていた。
それを認識した瞬間、猛烈な痛みに襲われる。
「理人……?」
「はぁ……っ、はぁ……っ!」
「どうしたの、理人。お母さん、何かしちゃった?」
息がうまくできない。まぶたが重くなって、目を開けていられない。意識が遠のく。
なんで、なんでこんなことに……。
心配するふりをした、母さんのような女が視界でぼやけていく。
何が、何かしちゃった? だ。
おまえのせいだ。
ふざけるな。
許さない。
許さない。
許さない。
母さんの言葉がよみがえる。
俺のことを愛していると言ってくれた。抱き締められると、温かくなった。
好きだった。
俺は、母さんを愛していた。
でも、この女は俺を愛していない。
愛を、愛しているんだ。
「うっ……はぁっ、はぁ……っ!」
目の前がチカチカと瞬く。
ナイフが皮膚を破いていく。溢れてくる血液で、手が濡れた。
もう、俺は意識を保つことができなくなる。
「え……? 私、どうして……何、これ……。理人? 理人……っ!」
誰かが俺を揺さぶる。
体は冷えていくだけだった。



