亘さんは世渡り上手



亘さんは黙って写真を見ていた。写真というよりは、笑顔、だろうか。



「みなさん素敵な笑顔ですね」


「そうだな。まだ楽しかった時期だ」


「……話してくれるんですよね?」


「……も、ちろん。そのために見せてる」



声が震えてしまった。


怖い。思い出すのが怖い。


でも、亘さんには伝えないと。父さんも、そうするべきだと背中を押してくれた。


信頼するなら、この先も付き合っていきたいなら、すべてを受け入れてくれる人がいい。



「和泉くん」



亘さんが俺の頬に手を当てた。


俺はいつの間にか下を向いていたようだ。ゆっくりと俺の頬を持ち上げて、亘さんは自分の視線と合わせようとしている。


そして、視線が合ったとき――亘さんは笑っていた。



「大丈夫です」



卑怯だ。


覚えたての技をそんなに簡単に使わないでほしい。


俺が決意したと同時に、満足げに離れていくひんやりとした手が物寂しかった。



「……俺の母さんは、愛されることが大好きな人間だったんだ。だけど、ちゃんと愛されるために愛を与えていた。母さんのくれる愛の分、俺も愛を返す。仲の良い親子だった」



俺は、服をめくって腹を晒した。


これを見せるのが、何があったのか一番わかりやすくて手っ取り早い。



「――っ! それは……」



亘さんが息を呑む。



「でも、少し間違えただけでこの有り様だ」



そこには、永遠に消えない傷跡が刻まれていた。