パタンとドアを閉じる。
小さな本棚と折り畳み式のテーブル、それから端に寄せられた布団だけがある狭い部屋だ。
俺は本棚からアルバムを抜き出すと、亘さんに向き直った。
「亘さん、適当に座って」
「……はい」
俺が座ると、亘さんはその隣に座ってきた。
できればテーブルを挟んだ向かいの方が緊張しなくてよかったけど、まぁ、隣の方が見やすいか。
「俺の家、母さんがいないんだ」
アルバムを広げながら言う。
亘さんは、静かに頷いた。
「なんとなく、そうなんじゃないかとは思ってました。以前和泉くんのラインの画面が偶然見えたとき、お父様と私の名前しかありませんでしたから」
「あー、見られてたんだ」
どう見ても不自然だもんな、俺のライン。
「まぁ別に、死んだってわけじゃないんだ。俺たちの知らない間に死んだなら、死んだってことになるけど」
目当ての写真を見つけて、亘さんにアルバムを寄せた。
「これ、俺の母さん」
俺と父さんと母さん、みんなで遊園地に遊びに行った写真。八年前くらいだろうか。このときはまだ、みんな笑顔だ。
これ以外に母さんが写っている写真は父さんがすべて捨ててしまった。俺はこっそりこの一枚だけ自分のものにしたけど、きっと父さんは気づいてるだろうな。



