……どうしよう。父さんが帰ってきた。
俺はおろおろと視線をさ迷わせる亘さんに手を差し出す。
「行こう、亘さん」
「えっ? は、はい……」
二人でイスから立ち上がって、廊下へ向かった。
「おかえり、父さん」
「あぁ、理人。今日は迎えがなくてちょっと寂しくなりそうだったよ。で……その子は?」
父さんは目を細めて俺の後ろに立つ亘さんを見る。怖い顔だ。声だって低い。
まったく、父さんは過保護だ。まさか俺の友達が女子だなんて思わないのだろう。亘さんが安全な人間なのかどうか、見定めている。
「はじめまして、亘叶葉と申します。和泉くんとは友人です」
亘さんも父さんの聞きたいことがわかったようで、きっぱりと友人と言い切っていた。
父さんは少しだけ表情を緩ませる。
俺だけだ、この言葉でもやもやしているのは。
「理人、本当?」
「うん。前話した、信頼してる子だよ」
「あぁ、あの。……女の子だったんだな」
「……うん。本当に、亘さんは大丈夫だから」
「そうみたいだな。でも、父さんに言わないで勝手に家に入れるのはもうやめろ。またこういうことがあっても困るだろう」
「わかった」
父さんは静かに怒っていた。
俺は、父さんに心配をかけてしまったんだ。
忘れていた。俺にとって一番大切な人は父さんなんだって。俺は今、父さんを裏切ることをしてしまったんだって。



