亘さんは世渡り上手




「亘さんのそれは、ただの言い訳だ。自分を正当化しようとしているだけ。告白されたら断ればいい。亘さんは相手の気持ちより、自分の笑顔の方が大事なんだから」


「そ、そんなこと」


「人に嫌われたくない? 人に恋愛感情を抱かれたくない? そんなの両立させるのは不可能だろ。亘さんが一番よくわかってるんじゃないか?」



亘さんは顔もいいし、性格にも気を遣ってる。笑えば、もっとモテるなんてあたりまえだ。今でもこっそり亘さんのことを好きな人間はいるだろうからな。


そういうやつらは、亘さんからの接し方が完全に友達だから踏み出せないだけなんだろ。



「もっと自分勝手になっていい。周りばかり見るな。どうしても理由が必要なら、俺のせいにしたっていい。俺がどうしても亘さんの笑顔が見たいから仕方なく笑ってやったって、そう思え」


「あ……」



ここでようやく、亘さんは座ってから初めて俺を見た。




「俺のために笑えよ、亘さん」




お手本代わりに笑ってやった。


俺達は似た者同士だ。


トラウマの原因が三年前なのも、周りの目ばかり気にしてきたのも、全部ひとりで溜め込もうとするのも。


亘さんも俺にこんな気持ちだったのだろうか。俺は今、亘さんの気持ちがなんとなく理解できていた。


でも、亘さんが弱っているところを見てやっとだ。谷口みたいに、無意識に亘さんを安心させられる言葉はかけられない。


だから、考えるんだ。俺なら、どんな答えを求めるか。どんな言葉に救われるか。