「恋愛って、実はよくわからないんです。気持ちを伝えられても応えることはできませんし、笑顔をなくすだけでわたしに気持ちを伝えてくる人は減りましたから……」
「安心したんだな」
「そう、なります」
だから亘さんは笑えないんだ。笑わない方がいいから。笑わない方が、自分にとって都合がいいんだ。
笑顔っていうのは、相手に好印象を与えるのに手っ取り早い方法だ。笑うだけで人当たりが良く見えやすいし、話しかけやすくなる。
亘さんはそれを利用して逆に悪印象を与えるようにしたのか。その代わりに、性格の面でカバーをして人に嫌われることは避けた。
無意識だったのか、意識的だったのか……好意の種類をあくまで友情に止めることだってできていたんだ。
「でも、笑いたいって気持ちは本当なんです! ただ、ただ……周りの目を気にしてしまうだけで」
亘さんはひとりでここまでわかってしまっている。ただひとつ、解決方法だけが浮かばないんだろう。だから俺に助けを求めている。
いや、解決方法なんて言うまでもなく簡単じゃないか。
嫌われるのも嫌で?
好かれるのも嫌?
ずいぶん贅沢な話だな。
「亘さんは、人に好きになってもらうのにどれだけの努力が必要かわかってない」
俺はずっと、亘さんの才能が憎くて、眩しかったっていうのに。



