亘さんは世渡り上手



それから――俺達は、狭いマンションのリビングで立ち尽くしていた。


……え、これ、犯罪じゃないよな? 元気のない友達を励ますために、一旦自分の家に招いただけだよな?


いくら父さんがいなくて二人きりでも、俺達は友達だから何も変なことは起こるはずがない。


よしよし、落ち着いてきた。なんで俺はあの状況で、「……俺ん家来る?」とか言えたんだよ。勢いってこえー。


それでなんで亘さんものこのこ付いてくるかなぁ。 いや、別に、来たからって何かするわけじゃないんだけど。



「……」



家に入るときにボソッと「……お邪魔します」と言ったきり話さない亘さん。


なんで俺の家なのに俺の方がそわそわしてるんだよ。



「亘さん……とりあえず、座って」


「……ありがとうございます」



イスに向かい合って座った。……もっと大きいテーブルがあればよかった。父さんとだったら気にしてこなかったのに、なんだか息苦しく感じる。



「わたし……笑えたんです」



亘さんが口を開く。その言葉に、「えっ!?」と大きく声をあげてしまった。


え、亘さんが、笑えた? 俺との練習では全然ダメだったのに……。



「和泉くんのことを考えると、自然と口角が上がっていたときがありました。実際に鏡では見ることはできなかったんですが……」



心臓が鳴る。そのことを理解した瞬間、だんだんと心音は早くなっていく。


亘さんも、俺のことを考えてくれていた。