亘さんのメモ帳が気になる。
テスト勉強中も、テスト中も、帰りも、家でも。
俺はちらちらと亘さんのメモ帳を入れたスクールバッグを気にするも、中身をみることはできなかった。
理由は――なんとなく。
亘さんが俺のことをどう思っているのか。俺のことをどう見て、何が大切だと思ったのか。それを知るのが……なんとなく、怖かった。
俺の亘さんに対する気持ちは、もう固まっている。
ただ、それが、亘さんも同じかどうか――
「理人、どうしたんだ?」
「……えっ?」
父さんと夕食を食べていたら、父さんが心配そうな目で向かいから見つめてきた。そこで、箸が止まっていたことに気付いて慌てて口に入れる。
今日はテストが無事終わった記念に父さんが俺の好物であるビーフシチューを作ってくれたというのに。
何やってるんだ俺。せっかく父さんといられる時間なのに、亘さんのことばかり考えて……。
……いや。
「――――父さん、俺、信頼できる友達ができたんだ」
入学したときは、誰も信頼する気なんてなかった。
それが、今ではどうだ。亘さんともっと仲良くなりたくて、自分から高橋達にも歩み寄ろうなんて考えている。
それは、父さんを安心させるために言うべきことなんじゃないか。



