亘さんは高橋の隣で付きっきり授業をしていた。
高橋はバカ丸出しの表情で、見てわかるくらい疑問符が頭の上を飛び交っている。それに呆れた顔をする俺と谷口。バカにする八木。気にしない宇佐美。
楽しい。俺、こいつらといるの、やっぱり嫌いじゃない。
だからこそ、俺自身の問題を早く解決しないとな。
妙にすっきりした気分だった。もうすぐ夏休みなのに、嫌な気分にならない。
これも、亘さんのおかげかもな――――
「……あれ? 亘さん、笑ってるじゃん」
急に谷口がそう言った。
視線はすべて亘さんに注がれる。俺も例外じゃない。
亘さんの表情は、いつも通りだった。口角なんて上がっていない。いったい、谷口は何を見てこれを笑っていると言ったのか……。
亘さん本人でさえ、急な目標達成に目を丸くして、勉強を始めてから初めて高橋から目を離した。
「え、みんな、わからない? まぁ、表情こそ変わってないけど、なんとなくわかるじゃん。雰囲気っていうか、楽しそうっていうか……。
これが亘さんにとっての笑顔じゃないの?」
俺は、学校で一番亘さんのことを理解していると思っていた。
だけど、もしかしたら、谷口の方が――?
……こいつ、俺のライバルだ。



