放課後、前回のように机をくっ付け、各々好きな席に座っていく。
「そういえば笑顔の件、どうなったの?」
横に座ってきた谷口が俺の顔を覗き込んだ。前に座った亘さんにも聞こえる音量で言われたので、確認のために亘さんを見たけど、気にするようすもないので普通に答える。
「今、笑顔の練習をしてるよ」
「ふーん、そっか。よかったよかった。また亘さんが私の勝負を受けてくれるようになったのも、理人のおかげだったんだね」
……どっちかっていうと、谷口のおかげのような気がするけど。それは悔しいから言わない。
次は、宇佐美からツンツンと肩をつつかれる。
こっちは、谷口達もいるからか小声だ。
「……理人、合コンの日時決まった。はい、紙で渡しとく」
「あ、ありがとう。わざわざ……」
罪悪感が募る。そもそも俺が素直に連絡先を教えていれば、気を遣ってもらわなくて済んだのに。
いつかは、ここにいる全員に教えられるようになりたい。そのためには、まず今までに吐いてきた嘘を告白しないといけない。
俺に厳しい母親なんていないこと。本当はみんなを信頼できないでいたこと。信頼できなかった理由。本当の俺の姿。その全部を。
いつまでも亘さんに甘えるのはダメだよな。



