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「亘せんせぇ! テストが、一週間前になってしまいましたね!」


「はい、そうですね」


「あたし、びっくりしたんです。あのクソつまんなくて、意味わかんない授業の内容が、テストで解ける日がくるなんて!」


「前回のテスト結果がよかったんですね」


「そうなの! あの快感が忘れらんなくて! ……今回もテスト勉強、しましょう!!」


「いいですよ」


「やったー!」



八木が勢いよく両手を上げて万歳した。


というわけで、八木の提案で第二回テスト勉強会をやることになった。参加者は前回と同じ。高橋は宇佐美が逃がさないようがっちりと首をホールドしている。


まさか一番勉強ができることに嬉しくなっているのが八木だったとは……。この調子で、テスト前だけじゃなく普段も勉強してくれるようになるといいんだけど。



「八木……自主的に勉強したいなんて……おまえ、まさか頭良いのか!?」


「やーいやーい、高橋のばーか!」



高橋を煽り散らす八木。呆れた目で見るしかない。周りを見ると、谷口も俺と同じような目をしていた。


ズボンのポケットに手を入れる。俺は、そこに入った亘さんのメモ帳に触れて、ぎゅっと握った。


……亘さんの弱点を、手に入れてしまった。


前までは奪えば、亘さんが俺に逆らうことはなくなると思っていたけど、まさか、本人から渡されるとは。


それくらい、信用されているってことでいいんだろうか。そりゃあ、もう亘さんの弱味に興味なんてないけどさ……。