それから、俺達は毎日放課後、一時間くらい居残りで笑顔の練習をするようになった。


俺の見本だけでなく、本やネットの知識を駆使しても――未だ成果はなし。


原因もしっかり自覚していて、それを和らげる方法まで提示したのに、どうして変わらないのか。あるいは……変わろうとしていない、のか。


亘さんに休憩と言って教室から自動販売機の前にやってきた俺は、買った水に口を付けながら考えた。


まだ俺の気持ちが、亘さんに届いてないってことかもな。怖がらせてきた、なんて軽く言ってたけど、笑顔を失うことが軽いわけがない。


言葉だけじゃ、伝わらない。何か、行動でも強く伝えられる方法があればいいんだけど……。



「お帰りなさい、和泉くん」


「ただいま」



教室に戻れば、亘さんが手鏡を持ちながら指で無理矢理広角を上げていた。でも、目元はかなり険しい。


あれ、そういえば俺、何か忘れてる気がする。亘さんに、何かを伝えておかないとと、思っていたような。



「あ、次はですね、この方法で行ってみたいんですが……和泉くん?」



あ……そうだ、思い出した。谷口に言ってしまったこと、亘さんに謝っておかないといけないんだ。