「すみません、変な嘘つかせちゃって」

家へと続く線路沿いの道。手を離すタイミングが分からなくて、私たちはずっと繋いだままだった。
 

「いいよ。別に。昨日Gを退治してくれたお礼」

それに、私が行こうと言わなければ理沙ちゃんはもっと強引に加島に詰め寄っていた気がするし。


「理沙とは最近まで付き合ってたんですけど、けっこうこじれちゃってて……」

なんとなく、そうだろうと思ってた。

私に対しても嫉妬心がむき出しだったし。加島のことが好きで仕方ないということは理沙ちゃんを見ればすぐに分かる。


「まあ、色々あるよね」 

私はあえてシンプルな返事をした。


「深く聞かないんですか?」  

私は無関係だけど、家に帰らない理由と繋がっているのなら聞く資格はある。でも……。


「話したくなった時に話してくれればいいよ」


加島の事情なんてなにひとつ知らないけど、加島が話す気分になれていないことは顔を見れば分かるし、無理やり聞き出したいとは思わないから。


「それより今日はパスタを作ってよ。魚介類がいっぱい入ったトマト味のやつ」

気を張るのをやめたら、なんだか急にお腹がすいてきてしまった。


「デザートにプリンもでしょ?」

加島が加島らしい顔でクスリとする。


私たちは性格も共通点も好きな人のタイプでさえ違うけど、話しているとお互いにいつもの自分に戻れるところは似ている気がした。