食事が終わってお店を出たあと、辰巳さんは家まで送ってくれた。


「今日はありがとうございました。ご飯もすごく美味しかったです」

「うん。俺のほうこそ今日はありがとう。久しぶりに伊織と出掛けられて嬉しかったよ」


車越しでいいと言ったのに、辰巳さんは見送るためにわざわざ車を降りてくれた。

空には無数の星が浮かんでいて、すっかり辺りは夜になっている。こんな時間に帰ってきたのもなんだかとても久しぶりだ。
 


「ねえ、伊織。また会ってくれる?」

そんな中で、辰巳さんの声が耳に届く。


「……え?」


聞き直したのと同時に、私は辰巳さんに腕を引かれて身体を引き寄せられた。

ふわりと、また辰巳さんの甘い匂い。



「また会いたいから、連絡する。余裕がなくてごめんね」

辰巳さんは私の頭を撫でて、そのまま車に乗って帰っていった。


……ビックリした。

付き合ってた時はもちろんお互いの身体に触れることはあったけど、あんな風に余裕なく腕を引っ張られることはなかった。