【短】祭の夜に会いたくて



「どうしよう」

「何が?」

「わたし、いつも夏が来るのを楽しみにしてた。ハルに会えるのを楽しみにしてたの。今度は何を楽しみに……」



 最後まで言い終わる前に唇を塞がれる。


 初めてキスした。初めてのことばかりで、何も言葉が出てこない。



「これからは毎日が楽しみになるよ」



 ハルが花火を見つめる。わたしもつられるようにそっちを見た。



「恋人なんだからさ。電話したり、デートしたり、知らなかったこと知って、たくさん笑って、ケンカして、キスして。そういうのを繰り返してさ、もっと好きになるんだよ」



 はにかむような笑顔が可愛らしくて、さっきまでのカッコ良さはどこへいったんだって思うほど。


 そういうハルのこと、全然知らなかった。