「いえ、びっくりしましたけど大丈夫です。あの、ナツキさんですか?ずっとナツキさんの作品が好きで、今日出店されるってブログで見て来ました!このバッグもすごくお気に入りで」

ショートで明るい髪のこの人がナツキさん!なんだかかっこいい。
そんなことを思いながら会いたかった気持ちをぶつけた。
するとナツキさんは困ったような顔をする。
何か言ってはいけないことを言ってしまったのかな・・・。

「半分当たりかな?」

ナツキさんは曖昧に返す。
首を傾げる私にナツキさんは隣の男性を指さした。

「ナツキはこっち!」

「え!」

驚きのあまり変な声が出た。ナツキさんが男の人?

「ブログでハートマークとか顔文字がいっぱいだったので勝手に女の人だと思ってました」

男性と女の人の顔色を交互に窺っていると男性は申し訳なさそうにこちらを見ていた。

「インターネットとかが苦手で、ブログや通販は姉に任せていたので間違うのも無理ないですよ」

男性のフォローに胸が痛む。だって、女性だと思っていたのには他にも理由があるから・・・。

「ごめんなさい。本当は最初から編み物ってだけで女の人だと思ってたんです」

頭を下げる私に「正直な人ですね」とナツキさんは笑った。その笑顔はとても優しく、胸の奥がギュッとなった。他になんて表現したらいいかわからない。この気持ちがなんていうのかもよくわからないけれど彼の笑顔がとても好き。そう思った。

「あ、ブログとかをお姉さんがしているということは商品名もお姉さんですか?だから商品名も可愛らしい感じだったんですね!このバッグも葡萄狩りって名前だし、新作のこのミニ巾着とか。お菓子屋さんの巾着って可愛いですね!」