表札は〝白咲〟となってるから間違いなさそう。


「ほら、美夜。降りて」


お母さんが外から後部座席のドアを開けた。


その瞬間カラッとした暑さが私を支配し始めた。


「暑すぎ…」


さっきの男の子、よくこんな暑い中土手にいられるなぁ。


「自分の荷物は自分で持ってね」


と言われても、私の荷物なんてほとんどない。


ボストンバッグを1つ車から降ろす。


これだけだ、私の荷物は。 


「あら、清二郎(せいじろう)さんの娘さんとお孫さんかしら」


私たちが呼び鈴を鳴らそうとしたら、家の中からお婆さんが出てきた。


清二郎っておじいちゃんのことかな。


「はい。今日からこちらに引っ越してきました」