「……美夜のせいじゃない」


コウちゃんはそう言いスマホを耳に当てる。


「…救急車…1台お願いします。M雑居ビルです」 


脱力したようなコウちゃんの口調。


「……すぐ来てくれるって」


私が…耐えていれば…。


立花さんと口論せずにおとなしく黙っていたら…。


「どうしよう…立花さんが……っ」


私のせいだ…。


全部全部、私のせいだよ…っ。


「落ち着け。誰も美夜を責めたりしない」


コウちゃんがそう言って、震える私を抱きしめてくれた。


「コウちゃん……っ」


「大丈夫だから…。大丈夫…」


まるで自分を落ち着かせているようなコウちゃんの言い方に、不安を感じる。


やっぱり立花さんは…。


ピーポーピーポー…


遠くの方でサイレンが聞こえる。


「下、降りよう」


コウちゃんに手を引かれ、固まる足を引きずり私は下まで降りたのだった。