信号が青になった。 


いつもなら人が少なからずいるはずの横断歩道なのに、こんなときに限って私とコウちゃんしかいない。


神様は本当に意地悪だな…。


少しずつ二人の距離が縮まっていく。


その距離、わずか3メートルほどのところで、コウちゃんと…目が合った。


「コウちゃ…ん…」


やっとの思いで発することができたのは、コウちゃんという単語だけだった。


あからさまに反らされる視線。


すれ違う身体。


「待って…!」


振り返り、コウちゃんへ呼び掛ける。


だけど、コウちゃんは立ち止まってはくれなかった。


聞こえてたはずなのに、聞こえないフリして、コウちゃんは去ってしまった。