山下さんの足取りはフラフラしていて、景に追いつかれるのは時間の問題かと思われた。


だけど、入り口から人影が飛び込んで、山下さんを抱き止め、そのまま外へ引っ張った。


間一髪…。


安心して気が抜けたとたん、とんでもない痛みが全身を貫いた。


「あの人影は東雲晴流だった。どういうつもりだ」


最悪の事態だ。


ナイフで刺されて右腕は痛み、晴流と組んでることもバレた。


不幸中の幸いは山下さんを逃がすことに成功したことだけ。


「…知らない。私は今日ここに一人で来た」


シラを切るしか道はない。


こんな嘘、どうせすぐバレるだろうけど…。  


その場しのぎの言葉でしかないんだから。