「コウちゃんには分かんないだろうね…っ。好きな人に捨てられた私の感情なんて…っ!」


その時、涙でボヤける視界の端で何かが光った。


そしてチクリと右腕に走った痛み。


〝何か〟の冷たい感触が腕に食い込んでいく。


「い…っ」


赤黒い液体が腕から流れていく。


光った〝何か〟の正体はナイフだった。


唯が持ってるナイフ─。


「黙れ」


唯がナイフにさらに力をこめる。


「い…たい…」


あまりの痛みに意識が飛びそうになったけど山下さんを解放するまで倒れるわけにはいかない。


「腕、切り落としたっていーんだぜ?」


目がイッてる…。


本気でヤバい奴だ…。