下を見ると、高さのあまり目眩がしてきた。


こんなつもりじゃなかった。


ここに立ったらすぐに飛び降りるつもりだった。


なのに、目眩がする。


体をさらわれそうで、吹きつける風が怖い。


「……怖いだろ」


…え…?


突然、彼の声色が変わったのがわかった。


刺々しいのは変わりないけど、どこか優しさを感じられた。


「死ぬなよ」


…何…言ってるの……?


さっき私に死ねって言ったクセに…っ。


「飛び降りれないのは躊躇してる自分がどこかにいるから。目覚ませよ。何があったか知んねーけどさ。生きてたらそのうち良いことだってある」


……。


「そんなの綺麗事でしょ」


汚れたこの世界にそんな都合のいい話なんてあり得ないんだよ。