さすがにそこには人なんていないか。


いたとしても、人間の死を喜ぶ真っ黒なカラスとかかな。


貯水タンクを一瞥し、柵に近づく。


私の腰くらいの高さの柵は、そんなに苦労することなく越えられそうだ。


柵に手をかけ、力をかける。


そして、片足を宙に浮かす─。


「お前、死ぬつもり?」


っ!?


突然聞こえた低く冷たい声。


確認したときは誰もいなかったのに!


振り向いて入り口を確認したけど、鍵はちゃんとかかったまま。


貯水タンクへと視線を上げても、誰の姿も見えなかった。