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都会の夕方はせわしない。


夕陽が綺麗に輝いていることに誰も気づかず、早足に歩き去る。


私も…この世を去る。


この場所はちゃんと下調べして選んである。


不良が集う地域にある5階建ての廃墟の屋上から飛び降りる。


やっと苦しみから解放される。


もっと早くこうすればよかった。


リスカなんていう馬鹿らしいことなんてやってないで、始めから死ねばよかった。


どうせこんな私の未来なんて真っ暗。


黒く塗り潰されてるんだから…。


「ふぅ…」


柵をまたぐ前に周囲を見回す。


屋上の入り口にはちゃんと鍵をかけたから、誰かに邪魔されることはない。


決して広くはないこの屋上。


入り口の扉の真上には貯水タンクがある。