だから余計に心の傷がエグられていく。


「朝香と…現実と向き合うことが簡単なことじゃない?ふざけんじゃねーよ。そんなこと言える立場かよ」


グサグサと心が切り裂かれていく。


ただ、なぜだか分からない涙だけが溢れてくる。


責められて泣いてるのか、苦しくて泣いてるのか、後悔して泣いてるのか…。


「……ごめん。言い過ぎた」


晴流はそう言ってカウンターの中に戻ってしまった。


ジャーっと洗い物をする音だけが流れていく。


お客さんが来てほしいとこれほど願った瞬間はなかった。


「…は…る…」


まだ怒ってるであろう晴流の名前を呼ぶ。


「何?」


晴流のトーンは普段通りに戻っていた。