「ねぇ、なんでこんなド田舎に引っ越さなきゃいけないの?」


後部座席の車窓の外で流れてゆく景色は、変化を知らないようだ。


永遠に緑色の田んぼが両脇を過ぎていく。


見えている空は青々としていて、嫌でも夏を思い起こさせる。


夏と言ってもまだ7月頭。


夏本番はまだまだだけど、外は見るからに暑そうだ。


「仕方ないでしょ?おじいちゃんを一人で放っとけないんだから」


一応ここは東京に近い場所らしいけど、東京とはかけ離れてる。


こんなド田舎が存在するなんてって感じだ。


「会ったこともないおじいちゃんのために転校なんてしたくなかった」


私は、幼い頃にお父さんを亡くした母子家庭で育ってる。


だけど、今日から一緒に住むおじいちゃんはお父さん方のおじいちゃんだ。