だが、河内はドアを開けようとしなかった。
逆に、逃げようともしなかった。

身元を解った上で此処に来たのなら、どこに逃げても無駄だろう。
どうせドラマのように、管理人から鍵を預かっているから直ぐに入ってくる。

ならば、このままじっとしていても代わりはない。
捕まったら捕まったで、親父が良い弁護士を付けてもらえる。
それなら、逃げ回ってジタバタするよりはマシだ。

半分開き直ったような判断だった。


ドアベルの音を無視して、河内はケータイを弄り続ける。
眼はどんよりと曇り、疲れの色が見える。


ふと、大型掲示板で見つけたURLにアクセスする。
そのアクセス先で何かの違和感に気づき、ディスプレイを凝視する。
違和感の正体に気づいたとき……知らず知らずの内に目が点になった。