「まさかお姉ちゃんがリレーに出るとは思わなかったよ。」
「私もだよ。」
「最近体力戻ってきたんじゃない?私の方が疲れた。」
…走れば走るほど現役時代を思い出す。
早く、大会であの感覚を味わいたい。
風を切る、あの感覚を。
「お姉ちゃん、無理は禁物だからね。」
「分かってる。でもまだ余裕。」
「は?もー…」
私と美那は家に帰り、高飛びの練習を始めた。
マットも練習のための棒も、家のものだ。
現役時代の時に死ぬほど使った。
まさかまたこれを使うとは…
「行くよ、美那!」
「おっけ!」
右、左、右左右!
何だ、まだまだ飛べるじゃん。
体力落ちただけで体は覚えてるんだね。
自然と飛べたよ。
「何センチ?」
「今ので160。」
「…微妙。」
「でもまだ余裕あった。下手すりゃ2m行けるよ。」
ジャンプ力には自信あるしね。
現役の時は普通に2m越えしてたんだから。
「よし、じゃあ次は2m。」
「は?!」
「体がやりたくて仕方ない。」
「初っ端から?!」
私は高さを替えてもう一度飛ぶ。
女子の高飛びの中ではなかなか高い方だと思う。

「ー…うーん。やっぱり2m10が限界か…」
「私でも飛べないよ!」
「美那やってみ?」
私も美那も背面跳びだ。
空が見えて気持ちいいから。
今なら夜だから月が見える。
「できるか!」
「いいからやってみ。案外できるよ。」
「流石陸上のエース。」
私は美那にこの2m10を飛ばせた。
半ば強制で。
「…無理!やっぱり!」
「飛べたらジュース買うから。」
「本当?!じゃあがんばる!」
単純だな、我が妹よ。
人のこと言えないけど…
「お、美那、頑張ってるじゃないか。」
「私だけじゃないよ!
お姉ちゃんも今度の大会出ることになったんだから!」
「え、李那も?!」
お父さんは帰宅してすぐ庭にいた私たちに駆け寄る。
私をぎゅっと抱きしめてくれる。
「李那、本当か?!」
両手で私の顔を掴み、自分の方に向かせる。
挟まれてるため変な顔になってると思う。
「そうだよ。」
「そっか!じゃあお父さん仕事休んで見に行くからな!」
お父さんは私をいつも応援してくれる。
なんだかんだ溺愛されてるけどむかつく時もある。