「ーん〜!!やっとおわった!」
「おつかれ。」
放課後。
俺と海澪は掃除をぱぱっと終わらせて李那の元へ向かった。
まだ目覚めてないかもしれない。
だけど、李那の所に行きたいんだ。
少しでも長く居たい。
「ー…ここ、だな。」
「…そうだね。」
手術室、検査室がすぐ目の前にあるこの部屋。
李那の病室はそこに移されていた。
そろりと扉を開ける。
「…」
「…」
李那は、居た。
扉を開けた先。
ふわふわ揺れるカーテン。
サラサラ靡く彼女の髪。
呼吸器を付けられ点滴を付けられ。
頭に包帯を巻かれて、顔にガーゼを貼られ。
真っ青の顔で。
でも穏やかで。
李那はそんな状態で眠っていた。
慌てて心電図を見る。
…生きてる。
死んでるんじゃないかって言うくらい真っ青な顔で。
こんなに穏やかな顔、今まで見たことない。
「…そんなに、死にたかったのかな。」
「蒼空?」
「李那、死にたかったのかな。」
隣で海澪は俯いてしまった。
泣いてしまったのなら俺のせいだ。
でも、この穏やかな顔を見る限りそうとしか思えないんだ。
李那は苦しみから解放されたくて、身を投げたんじゃ…
「…李那…」
呼びかけても当然返事はない。
だって、意識がないから。
「…今日はな、あのじじいの授業があったよ。
李那がいた頃の教室思い出してたら海澪に気味悪がられた…」
「だって、気持ち悪かったんだもん。」
今日あった出来事を李那にも伝える。
そうしたら目覚めてくれる気がして。
【更科蒼空side END】
【中矢裕side】
李那の病室の前まで行ったら楽しそうな声が聞こえてきて。
李那が目覚めたのではないかと思って、耳をすまして見たけど、やっぱり李那の声は聞こえない。
蒼空と海澪ちゃんだ。
「あ、裕さん。すみません、お邪魔してます。」
蒼空、約束は守る男なんだな。
『これからは俺も李那の様子見に行くようにします。』
…正直、来ないと思ってた。
仲良いとは思っていたけど、わざわざ来ないと思ってたから。
「俺、約束は守りますよ。
裕さんだってそうでしょ?」
「…うん。ありがとう蒼空。」
とりあえず2人をパイプ椅子に座らせ俺はお茶を煎れに行った。
…緑茶しかねえか。
ジジくせえ。
仕方ないか。
「すまん、緑茶しかない。
病院だから許してくれ。」
「え、気遣いなんて良かったのに…」
気遣いなんかじゃない。
純粋な心の表れだ。
「俺、お前らが思うような良い奴じゃない。」
…蒼空が思い描いてくれてるような選手じゃねえんだ…
「李那から少し聞いたかもしれないけど、俺、中学の時…」
「少し聞きましたよ。
浮気…未遂したんですよね。」
「…ああ。」
あの時はほんとに悪いことしたと思った。



