【古川海澪side】
…なんか…李那機嫌悪い?
機嫌悪い時の李那っぽかった…
「海澪、とりあえず俺らも試合行くから。李那頼むわ。」
…頼むわって…
蒼空のやつ、李那の彼氏でもなんでもないのに…
ムカつくやつですな。
それにしても李那どこいったんだろ…
戻ったのかな?
「よっ」
「あっ!夕彩さん!茉希!沙良!」
「見に来たよ!」
揃いも揃って…
茉希と沙良は仲良いから分かるけど。
「さっきそこで2人とばったり会ってな。そのまま一緒に来た。
李那はどうしたの?」
「それがさっきから見当たらなくて。トイレ見てきます。」
李那の事だ。
フラーっとどっかいってフラーっと帰ってくるから。
見に行ってももしかしたら普通に席に着いているかもしれない。
「あっ、李那いた。」
「いちゃ悪いかね。海澪。」
「なんだいその口調は。」
「うつってるし」
李那は優しく微笑んで歩き出す。
「世莉香置いてきちゃったし、戻るよ。」
「あい。」
ゆっくり。ゆっくり。
李那は杖を付きながら歩く。
それに合わせて私も歩く。

「ーお待たせ世莉香。」
「おかえり〜」
「もうすぐ始まるっぽい。」
やっぱりマイペースの李那。
自分のペースで席に着いている。
試合が始まっても顔色1つ変えずにただ傍観している。
李那を真ん中にして両サイドに私たち。
たまに感心したかのように感想を述べたりしている。
「…あ、今の上手かった。」
「…そこは…」
ブツブツと隣で感想を述べている。
「李那、蒼空上手いね。」
「うん、カットがなかなか上手い。」
あら。素直。
いつも素直ならいいんだけどな。
こういう所直せばいいのに李那。
「勝つかな。」
「李那は勝って欲しいの?」
「そりゃあ世話にならせてもらったバレー部ですし。もちろん勝って欲しい。」
確かに助っ人してたもんね。
勝って欲しくないわけがない。
「蒼空のカット。
加藤先輩のアタック。
他のあの先輩のポーキー。」
「え?」
「あの3通り。
特に蒼空チビだから相手に舐められてる。
けど、蒼空はカット。
確実に取りに行く。」
…何気に今貶したよね。
チビって。
「あいつは落とさない。
確実にボールを拾いに行く。」
よく見てる。
試合の流れも分かってる。
流石李那だ。
「…勝てると思う。
吉野と当たって終わるけど。」
吉野高校は強豪校だ。
秀一は今日、吉野高校の応援に駆り出されている。
今日は私と秀一は、敵同士だ。
「蒼空…」
「今の痛かったな。」
相手のスパイクがキツすぎて蒼空の顔が歪んだ。
これで試合終了。
染井高校の勝ちだ。
「あーあ、蒼空の奴無茶するから。
多分あれ赤くなってるわ。」
「分かるの?」
「私も一応やってたからね。あのスパイクは痛いよ。3日間治らなかったもん。」
私はバレーやらないから分からないけど…
「蒼空〜」
「お、李那達だ。」
「やっぱりね。」
李那の予言通り。
蒼空の腕は赤く腫れ上がっていた。
「最後痛かったわあ〜」
「だろーね。馬鹿。」
李那はポケットから湿布を取り出して蒼空に手渡した。
「あと私もう帰らなきゃならないから。
病院に帰らなきゃいけないの。
試合は海澪とかから聞くから。
そんじゃ、頑張れえ〜」
ヒラヒラ〜っと手を振りながら李那はカバンを背負って帰って行った。