葉羽は本当にもう一度奇跡を起こした。

 それがサボテンに頼らず、自分で起こした真の奇跡だった。


 病室で横たわっていた葉羽は、確かに命を刻々と削られていた。

 あのままでは助からないとまでいわれていた。


 葉羽はあの後、大きな病院に移されて、ちょうどその入れ替わりに、俺があの病院に入って来た。

 看護師に葉羽がどうなったのか尋ねれば、それは教えられないと頑なに口を閉ざされ、それ以上のことは何も教えてくれなかった。


 あの時、俺は何も出来ずに、絶望して家に帰った。

 葉羽の家は電気もついてなく真っ暗で、まだ誰も帰ってきていない状態だった。

 これが何を意味するのか、俺は胸が苦しくなっていった。


 家では伯父と伯母が心配していたが、俺の気持ちを察してそっとしてくれた。


 その夜遅く、葉羽を病院に残したまま一家は戻ってきたようだった。

 そして、後に詳しく葉羽の状態を聞くと、葉羽はやはり造血障害を起こす病気で、命に係わるものだと、辛そうに教えてくれた。


 この病気は高齢に多いらしいが、稀に若年者も発症することがあるらしい。

 ただ、病状によっては完治する方法があり、葉羽の場合造血幹細胞移植をすれば助かるということだった。


 しかしその葉羽に適合するドナーを探すのが一苦労とあり、一番適合の確立が高い弟の兜ですら適合しなかった。


 病院のベッドに横たわる葉羽は助からないと諦めていたが、あの時大人になって呼びだされた俺は葉羽が助かる事を知っていた。


 でも大人の葉羽から、過去に戻ったとき未来のことは何一つ絶対に中学生の自分に言うなと釘を刺されていたのだった。


 だから俺はなんだかもどかしく、すごく息苦しくて、あの時助かるんだって喉まで出掛かっていたのを必死で堪えていた。


 葉羽にしてみれば、ドナーが見つかるという奇跡が起こったのは、絶望感の中で必死にもがいたから起こったことだと思っている。

 少しでも何かの要素が加わったら、ぴったりと行くべきところへたどり着けなかったように思う。

 俺が何度も励まそうと葉羽の前で手品をしたり、明るく振舞って葉羽を笑わそうとした努力が、生きる希望に繋がった。


 俺が強く支えて、奇跡が起こると信じていたのが葉羽の気持ちを変えさせたみたいだった。

 俺の言葉を信じて諦めなかったから、生きる希望が強くなって病気の進行にも影響したと思う。

 葉羽は俺のお陰で奇跡が起こったと、今になって語っている。


 だけど俺は全て葉羽の力だと思っている。

 もし、あの時未来から来た俺が簡単に結果を言っていたら、葉羽は努力を怠って本来迎える未来が変わってしまう結果になったのかもしれない。


 あの時の踏ん張りがあるから葉羽は勝ち取った。
 
 移植をしてから葉羽はすっかり元気になり、そして成長して大人になって俺の妻となった。

 混乱がないようにと予め俺には中学生の葉羽が授業を見に行くことや、病院に呼び寄せることを話してくれた。


 俺はまさかと思っていたが、実際授業中に葉羽が現れたときは、びっくりしたもんだった。


 でもタネを前もってあかされていたので、慌てることなく、存分に自分のやってることをみせたという訳だった。