「・・・・約1千万」
ぽつりと言われた言葉に愕然とする。
一般的には知らない。
でも今の我が家では到底返せないと脱力しそうだ。
それを返すために私はどこかに売られたりとか?
あり得ない。
さすがに身を売る様な仕事は嫌だと嫌悪して、思わずその身を包むように腕を回す。
「・・・・・安・・・」
「・・・あっ?」
嘲笑交じりに響いたのは雛華さんの声。
次いで雛華さんに掴みかかっている男の声も。
怪訝な顔で睨み下ろす男に、なーんだ。とばかりにその手を振りほどくと携帯を取り出す雛華さん。
何だ何だと私もその男でさえも黙ってその様子を見つめていれば、
「あんたたちの会社と振り込み番号は?」
「・・・・はっ?」
「今現在利子無しで1千万?」
「何をっ・・・」
「いいから・・・・・早く教えろって言ってんだよゲス」
最後の声の低さと迫力。
その眼は見えないのに威圧する空気に心から怯んだ。
自分に向けられたわけでない私がここまで怯えるのだから、対面しているあの人はどうなんだろう?
そうして見る彼はやはり萎縮して動揺した口調で会社名や金融機関とその番号を口にする。
そうして聞き入れながら何か携帯で操作する雛華さんがニッと口の端を上げそれをポケットにしまいこんだ。
「・・・・完済」
「えっ?」
「言われた額はもう完済したんだから・・・・芹ちゃんの前にはもう現れないでよね」
釘をさすように呆気に取られる男を覗き込み、クスクス笑うとようやく私にその体を向けた彼。
ふわりと軽やかに向かってくる姿が今まで上げていた口の端を序所に下げて近づいてくる。
そうして唖然としていた私の前に立った時にはもう笑顔は消えていた。
一体なんで?
そんな疑問で見つめていれば、その目を覆っていたサングラスに指をかけ軽く下げるとそのグリーンを私に見せる。
ああ、これは・・・。
罪悪感を孕んだそれ。
謝りたいと躍起になっている子供の目だ。



