そんな哲学的な結論が頭に浮かんだと同時に無警戒だったそれがピンと糸を張ったと思う。
心臓が強く跳ねた。
思わず触れていた唇を離せば、雛華さんも自分のしたことに冷静になって不安に緑を揺らす。
静かに私の肌を滑っていた雛華さんの手。
そのまま無意識に流れ落ちれば境界線を忘れ触れてしまった私の胸。
決して豊満ではない胸のふくらみを一度通りすぎ、そのまま落ちればまだ流せたものを。
男の本能が働いたのか確認するように、下から柔らかく持ち上げるように触られた胸。
さすがに驚いて顔を離せば同じ様に驚いた雛華さんの表情。
自分でも理解の出来なかった行動なんだろうか?
珍しく眼を泳がせた雛華さんが躊躇いながらその手を離し。
どこか怯えながら別の場所にその熱を移す。
その様子は私の反応が恐くて怯えているようで、躊躇いながら絡んできたのは私の指先。
少し・・・震えているのが分かった。
微々たるそれだけれど今酷くこの人は困惑して怯えてる。
だから私が出来る反応は・・・。
「大丈夫ですよ・・・・・」
口の端をゆっくり上げ、不安に揺れていたグリーンアイを安心させるように覗き込んで声を響かせた。
驚いたけれど怒ってはいない。
無垢と言っても成人した男の人なんだから勢いで欲が働く事はあるだろう。
でもそれに困惑する雛華さんが心底愛くるしいと思ってしまった。
これは・・・・母性本能?
言葉を口にしてすぐに絡みあった手を口元に持って来て見つめる。
指にハマった黒い石のリング。
ああ、私は・・・
「この指輪・・・・私結構好きです・・・」
そう告げてそのままその指に口付けた。
一瞬ピクリと動いた指先。
でもすぐに私の手をしっかりと握り返す力は柔らかく温かい。
わたしが怒っていないと判断すると、確かめるように私の額に唇で触れた雛華さん。
精一杯のご機嫌取り。
可愛らしいご機嫌取り。
「・・・ごめん、芹ちゃん」
「分かってます。・・・・怒ってないですよ」
言葉を肯定するように絡んでいる指先に力をこめ、今度は黒い石に唇を寄せた。
肌の熱の中の唯一の無機質。
余計な誤解をさせない様な冷たさだとどこかで思った。



