大王(おおきみ)に求愛された機織り娘

月が昇り、赤みが和らいだ頃、大量の酒が振る舞われている事もあり、宴は賑わいを見せていた。

私は、お酒を飲む大王の隣で、月を眺めていた。

先程から、大王と私の所へ何人かの豪族たちが正妃決定の祝いに訪れる。

周りに人がいなくなった所で、大王が教えてくれた。

「今、アヤを祝ってくれているのは、
妃を出していない豪族たちだ。
奴らは、吉備や出雲が妃を出して取り入ろうと
しているのが気に入らなかったからな。
あいつらは、今、自分がアヤの後ろ盾に
なろうと必死で画策しているぞ。」

大王は笑う。

どういう事?

私がきょとんとしていると、大王は分かり易く教えてくれる。

「簡単に言えば、アヤの親ではないが、
アヤの親のような立場になるために、アヤを
応援しようとしてるんだ。
手始めにアヤの母たちの住む家と機織り小屋を
大きくさせよう。
川に橋を架けさせて、香久山との往来を
し易くするのもいいかもしれない。」