大王(おおきみ)に求愛された機織り娘

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夕暮れと共に東の空に大きく紅(くれない)に染まった満月が昇る。

私は大王の隣に腰掛ける。

海の向こうの西国から届けられたこの椅子という物。

使えるのは、大王と私だけ。

大王は本当に私を正妃にしてしまわれた。


先程、大王が

「ここにいるアヤを正妃とする。」

と宣言された時、騒めきが起こった。

それは、決して祝福などではなかった。

驚きと落胆と恨み、嫉み…

様々な負の感情が私だけではなく、大王にも向かう。


それでも、私は顔を上げ続けた。

大王が私のためにしてくれた決断。

だったら、私は私に出来る事をしよう。

大王の正妃として認められるよう、気品溢れる振る舞いをしよう。

この艶やかな黄色の衣に負けないように。