・:*:・:・:・:*:・

その翌日。

また、さやさやと衣摺れの音がした。

顔を上げると今度は昨日とは違う媛がいた。

「まあ、本当に麻衣(あさぎぬ)を
着てらっしゃる。
大王はなぜ、このような鄙びた娘を
寵愛なさるのでしょう?
さぞ下々の者にしか分からぬ手練手管を
お持ちなのでしょうねぇ?
ほっほっほっ…」

勝手な事を言い捨てると、耳障りな甲高い笑い声を響かせて、媛は去っていった。

一緒にいた針子が、口を開いた。

「なんて、失礼なんでしょう!?
アヤ様、お気になさらないでくださいね。
ご自分が、大王の寵愛を受けられないから、
やっかんでるんですわ。
アヤ様がいらっしゃってから、大王は他の
お妃様の所へは通われて
いないそうですもの。」

そうなの?
私の所からは、夕餉を終えると帰ってしまわれるのに?
私が寵愛を受けてると勘違いされてるの?

こんな事が毎日続くのは耐えられない。
どうすればいいのだろう?