途端に私の胸がトクトクと忙(せわ)しなく鳴り始める。

「いえ、仕方のない事ですから…
大王も気になさらないでください。」

どうしよう…
胸の音がうるさくて、もう、食事も喉を通らない…

私が困っていると、

「アヤ、どうした?
もう食べないのか?」

と大王は私の顔を覗き込む。

「いえ、あの…」

私は大王の顔を見られなくて、顔を背けた。

くすっ
大王は笑みをひとつ零して、

「愛(う)いな。
そのように頬を染めるアヤを見ると、昨夜、
なぜあのような約束をしてしまったのかと
悔やまれてならない。」

そう言って、私の肩を抱く手に力を込めた。

「え、あの…」

戸惑う私に、大王は、

「少しは俺を愛しく思ってくれているのか?」

と耳元で囁く。