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空が黄昏れてくると、先程とは違う女が食事を運んできた。

聞けば、女たちは、女官といい、この宮廷で働いているのだという。

食事は、見た事もないような、豪勢な食事。

いつも羹(あつもの)や焼き魚、米や粟を炊いた物を食べていたが、ここでは、その他に、いくつもの品が並んでいる。

私の家は、里でも決して貧しい方ではない。

むしろ、献上品の機織りを生業とするため、他の家より、かなり豊かな生活を送ってきた。

なのに、大王はこれ程に贅沢な暮らしをしているのか。

私は、感動と憤りの混じった複雑な思いで、その食事を食べた。

だけど、おいしい食事のはずなのに、1人で食べる食事は味気ない。

「お母さん…」

ポツリと呟くと、頬を涙が伝った。



しばらくして、女官が、膳を片付けに来た。

女官が去ると、また1人きり。


毎日、機織りをし、家の事を手伝い、朝な夕な忙しく暮らしていたいた私には、何もする事がないというのは とても辛い…という事を 初めて知った。