大王(おおきみ)に求愛された機織り娘

だけど、ハヤは頑として私の願いを聞いてくれなかった。

私が、どんなに泣きじゃくって、どんなに取り縋っても。

「ハヤ! お願い…
ハヤはいつも私のお願い聞いてくれたじゃ
ない!
これで最後にするから。
私の最後のお願い、聞いて?」

「ダメです。
大王は、お妃様が危険な目に会われる事を
望まれません。
ここで、待ちましょう。」

「ハヤ!
だったら、私ひとりで行く!」

「アヤ!」

ハヤは私の両肩を掴んで、顔を覗き込んだ。

「しっかりしろ、アヤ!
馬にも乗れないアヤがひとりで行ける訳
ないだろ!?
大丈夫!
大王は、きっと戻られる!
きっと大丈夫だから。」

私はハヤの胸にしがみ付いて泣いた。
ハヤの大きな手が、私の背を撫でてくれる。
私が泣き疲れて落ち着くまで、ハヤはずっとそうしてくれていた。