「………いいの。
ハヤを責めてるわけじゃないの。
ハヤは、私を諦めてもう他に想う人は
できた?」

「………いや。
諦めたからって、そんなに簡単に
忘れられないよ。」

「私はね、今日、ハヤにお願いがあって
来たの。」

私はひとつ大きく息を吐いた。

「ハヤ、私を忘れて。」

ハヤは大きく目を見開いて、まっすぐ私を見た。

「大王は本当に私を大切にしてくださってる。
なのに、私は大王に応えてあげられないの。
私の中に、まだ、ハヤがいるから。
だから、ハヤ、私を忘れて。
私もハヤを忘れる。」

ハヤは何も言わない。

「ハヤ、これから話す事は、
誰にも言わないでね。」

ハヤは黙って頷いた。

「ハヤはこの里のために私を諦めたって
言ったけどね、大王は私のためなら、この国も
捨てるって言ってくれたわ。」