大王を見送って、私たちは家に入る。


狭かった私たちの家の前に、里長の家にも負けないほど立派な家が建てられている。

これは、葛城氏が建ててくれたもの。

葛城氏は、私と大王が出会った時にいた40過ぎのおじさん。

あの時は、偉そうなおじさんとしか思ってなかったけど、実はとても有力な豪族だと後で知った。

葛城氏は、誰よりも真っ先に私の後見に名乗りを上げてくれた。

隣の機織り小屋も、この後建ててくれるらしい。




私はハヤと向かい合わせに座った。

私の隣には兄さん。

気まずい空気が流れる。

「ハヤ、久しぶりだね。
元気だった?」

微笑んだ私が先に口を開いた。

「お妃様には、ご機嫌麗しく…」

無表情のハヤが型通りの挨拶を始める。